エルゴチオネインに期待できる脳や肌への効能・効果を研究情報から解説！

エルゴチオネインは強い抗酸化作用を持つ成分

エルゴチオネインは、一部のキノコ類や細菌類のみが合成できる天然成分で、希少アミノ酸の一種です。
エルゴチオネインの大きな特徴として、強力な抗酸化作用が挙げられます。
抗酸化作用とは、体内の活性酸素の生成を抑制したり、活性酸素自体を取り除く作用のことです。
活性酸素は、老化・ストレス・紫外線・タバコ・多量飲酒などによって増加し、がんや糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病、肌のシワやしみの原因となるといわれています。
この活性酸素を抗酸化作用により取り除くことで、生活習慣病を予防し、肌の状態を整え、老化を防げます。
抗酸化作用を持つ物質として、エルゴチオネイン以外にもビタミン類やポリフェノール類などが代表的です。
そんな中でもエルゴチオネインの抗酸化作用は、生体内に最も多く存在する重要な抗酸化物質であるグルタチオンと比較して、約3〜30倍も高いといわれており、非常に強力であることが分かります。

エルゴチオネインが脳にもたらす3つの効能・効果

エルゴチオネインには、脳の健康を維持する効能が期待できます。
具体的な効能について、下記の3つに分けて解説します。
①アミロイドβの凝集を抑制し、認知症を予防する効能
②脳神経を強化して認知機能を維持する効能
③脳の病気「うつ病」を改善する効能

①アミロイドβの凝集を抑制し、認知症を予防する効能

アルツハイマー型認知症の原因の一つは、βアミロイドやタウ蛋白という沈着物により、脳神経が障害されることです。
マウスを対象にした実験で、エルゴチオネインはβアミロイドの凝集を抑制するという報告があり、脳神経への障害を抑制し、認知症を予防する効能が期待できます。
また、軽度認知症患者では、血中のエルゴチオネイン濃度が健常者と比較して低いという報告もあり、エルゴチオネインの積極的な摂取が認知症の予防につながることが示唆されています。

②脳神経を強化して認知機能を維持する効能

エルゴチオネインは強力な抗酸化作用を持つため、活性酸素による神経細胞へのダメージを抑制するといわれています。
ヒト神経細胞を対象にした実験では、エルゴチオネインの投与により活性酸素による神経細胞死が抑制されたという報告もあります。
このことから、エルゴチオネインは神経細胞を保護し、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患を改善すると考えられています。

③脳の病気「うつ病」を改善する効能

マウスを対象にした実験では、エルゴチオネインのうつ病の改善効果も確認されています。
以下の図は、通常のエサ、エルゴチオネインを1%含むエサ、10%含むエサを与えたマウスに尾懸垂試験を行い、動かない時間を調べたものです。※動かない時間を抑うつ状態と判断する。

出典：Nakamichi et al., Food-derived hydrophilic antioxidant ergothioneine is Behav.2016 Apr 22;6(6):e00477.
図を見ると、エルゴチオネインを摂取したマウスの動かない時間が短いことがわかります。
よって、エルゴチオネインの割合が低くても、うつ症状に対する効果があることが分かります。

エルゴチオネインを摂取すれば、脳の健康を維持しやすくなるんですね！

ユーグレナ 鈴木

そうなんです。うつ病の改善効果も期待されているので、精神的にも健康でいられそうですね。また、ある実験で人間の記憶力がアップしたという結果も出ています。

エルゴチオネインの実験で人間の記憶力がアップ！

ヒトに対して行った臨床試験において、エルゴチオネインが言語記憶の向上・注意力の向上などに役立つという結果がでています。
ある臨床試験(出典：2020年4月20日発行 治療と薬理 vol.48,no4)では、健常者及び軽度認知症患者約50名を対象に、タモギダケから抽出したエルゴチオネインを3ヶ月間毎日5mg摂取してもらい、「Cognitrax（コグニトラックス）」という検査で認知機能の変化を記録しました。
※Cognitrax（コグニトラックス）は「言語記憶テスト」「視覚記憶テスト」「注意シフトテスト」などの13項目からなり、記憶力や注意力・反応速度などの検査が可能です。

出典：2020年4月20日発行 治療と薬理 vol.48,no4
結果、3ヶ月間プラセボを摂取したプラセボ群と比較し、エルゴチオネインを毎日摂取した群において、認知機能検査の結果に改善の傾向がみられます。
よって、エルゴチオネインは記憶力や注意力・判断能力の向上に対する効果も期待できるといえます。

エルゴチオネインに期待できるその他の効能・効果

エルゴチオネインには、強力な抗酸化作用に由来するさまざまな効果が期待できます。
①関節の痛みを軽減する効能
②肌のハリを維持する効能
③紫外線のダメージから肌を守る効能
④睡眠の質を改善する効能
それぞれの効能について詳しく解説していきます。

①関節の痛みを軽減する効能

エルゴチオネインには、関節の痛みの軽減や、可動域を改善する効能も期待できます。
ある実験では、被験者12人がエルゴチオネインを含む栄養補助食品を6週間摂取したのち、6週間休薬期間を過ごすテストが行われました。
その結果、関節の症状は1週間で改善が見られ、6週間後にはさらに高い効果を発揮しました。
さらに、6週間の休薬期間を終えたあともエルゴチオネインによる残留効果が見られ、症状の継続的な改善が実証されています。

②肌のハリを維持する効能

エルゴチオネインには、肌のハリを保ち、美肌を生み出す効能があります。
エルゴチオネインには、エラスターゼ活性阻害作用やチロシナーゼ活性阻害作用があるといわれています。
エラスターゼとは、肌の弾力を維持するエラスチンというタンパク質を分解する酵素、チロシナーゼは、皮膚のメラニン生成を促進する酵素です。
メラニンが過剰に生成されると表皮の色素沈着が起こり、シミやくすみの原因となります。
エルゴチオネインは、エラスターゼやチロシナーゼの活性を阻害し、ハリのある美肌に導いてくれるのです。

③紫外線のダメージから肌を守る効能

紫外線が肌組織に吸収されると、活性酸素が発生します。
活性酸素は、肌の弾力を維持するエラスチンやコラーゲンを変性させ、肌にダメージを与えます。
エルゴチオネインが活性酸素の発生を抑制することで、紫外線によるエラスチンやコラーゲンへのダメージを減少できます。
また、活性酸素が過剰に発生した場合、真皮と表皮の間にあるメラノサイトが活性化し、シミやくすみの原因となるメラニンも大量に生成されます。
そのため、エルゴチオネインの抗酸化作用は、シミやくすみなどの色素沈着にも効果があるといえます。

④睡眠の質を改善する効能

エルゴチオネインには、睡眠の質を改善する効能があるという報告もあります。
ヒトを対象にした研究において、毎日20mgのエルゴチオネインを摂取すると、睡眠障害が大幅に改善しました。
また、エルゴチオネインの摂取のタイミングに関わらず効果が表れることもわかりました。
よって、摂取のタイミングを問わずエルゴチオネインを積極的に、継続して取り入れることが睡眠の質改善につながるといえるでしょう。

エルゴチオネインには多くの健康効果が期待できるんですね。効率よく摂取するにはどうすれば良いのですか？

ユーグレナ 鈴木

エルゴチオネインの摂取方法については次にご紹介します！

エルゴチオネインはサプリや食品から摂取できる！

エルゴチオネインは、キノコ類や一部の細菌類などでしか合成されないため、サプリや食品から摂取する必要があります。
繰り返しになりますが、最も多く、効率よくエルゴチオネインを摂取できるのはキノコ類です。
なかでも、特にタモギタケやヒラタケに多く含まれるといわれています。

出典： 天然抗酸化物質「エルゴチオネイン」の量産化と用途発展の可能性「今月の農業1月号2009.39-43」（山形大学農学部貫名学教授）

以下の記事では、エルゴチオネインを摂取できる食べ物を詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

出典：FOOD Style21 2018年2月号(vol.22 No.2)を基に作成
成分の流出を気にせず、さまざまな調理法で美味しく摂取できるのもエルゴチオネインの魅力です。
また、エルゴチオネインを手軽に摂取できるサプリメントも販売されています。
毎日忙しく食べ物から摂取する暇がないという方は、試してみてはいかがでしょうか。
サプリメントを選ぶときは、1日当たり5mgのエルゴチオネインを摂取ができるか確認しましょう。

エルゴチオネインと既存の機能性成分の違い

エルゴチオネインには、認知機能維持・改善効果があることを紹介しましたが、同様の効能を持つ機能性成分は他にも複数あります。
以下は、脳に働きかける機能性成分のサプリメントとして販売されているものの例です。

さまざまな成分がすでに認知機能の維持を目的として普及していますが、エルゴチオネインは「神経細胞にアプローチする」部分が既存のものと大きく異なります。
また、エルゴチオネインには幹細胞の分化誘導を促進することも報告されています。
このことからも、神経損傷が生じた際、エルゴチオネインを摂取することで神経の再生を促進できる可能性が考えられるといわれており、神経変性疾患にアプローチできると期待されています。

エルゴチオネインに副作用はある？

エルゴチオネインの摂取による副作用は、現時点では報告されていません。
副作用を気にせず摂取できる点も、エルゴチオネインのメリットです。
エルゴチオネインは、主にキノコ類から摂取できる成分であるため、安心できると言えるでしょう。

ユーグレナのエルゴチオネインに関する研究

効果・効能に大きく注目されているエルゴチオネインについて、ユーグレナ社でも積極的に研究を行っています。
2020年10月には、第1回エルゴチオネイン・セレノネイン研究会を主催し、当社も「微細藻類ユーグレナに関連したエルゴチオネイン研究の可能性」について発表いたしました。
微細藻類であるユーグレナがもつ代謝経路「ワックスエステル発酵」において、硫黄の代謝がされることがわかっており、この硫黄の代謝の過程でユーグレナ自身がエルゴチオネインを合成していることが見出されたのです。
この結果により、ユーグレナ素材の魅力をさらに広げられるのではないかと考えられます。

エルゴチオネインに関するよくあるご質問

強力な抗酸化作用によりさまざまな効能を示すエルゴチオネインについて、よくあるご質問をまとめました。

エルゴチオネインは妊娠中に摂取できる？

欧州食品安全機関によると、エルゴチオネインの安全性は十分に確認されています。
ただし、妊娠中および授乳中の方は、体調によって状況が異なる場合があります。
エルゴチオネインを摂取する際は、医師にご相談ください。

エルゴチオネインの抗酸化作用はほかの抗酸化物質より強い？

人間の体内には重要な抗酸化物質であるグルタチオンが存在します。
エルゴチオネインの抗酸化作用は、グルタチオンよりもおよそ3〜30倍強力だといわれています。
体内に滞在できる時間が短い抗酸化物質もありますが、エルゴチオネインは長く滞在できることが知られています。
さらに、副作用や毒性が確認されておらず、安全性が高い点も特徴です。

エルゴチオネインの効能を高めるには？

エルゴチオネインは、少量ずつでも毎日継続的に摂取することでより効能が高まるといわれています。
なぜなら、エルゴチオネインは肝臓や腎臓、赤血球、皮膚などの各器官に長期的に貯蔵され・作用するためです。
サプリメントも活用しながら、少しずつ継続して摂取するのがよいでしょう。

エルゴチオネインの抗酸化作用はかなり強力なんですね！

ユーグレナ 鈴木

体の酸化を防ぐことは、健康維持に大きな効果をもたらします。少量ずつの摂取でも効果があるので、サプリや食品からエルゴチオネインを摂取しましょう。

まとめ

エルゴチオネインのさまざまな効能について、詳しく解説してきました。
抗酸化作用による脳神経細胞の保護・美肌効果・アンチエイジングなど、エルゴチオネインからはさまざまな恩恵を受けることができます。
また、体内に長期間蓄積できる成分のため、少量ずつでも毎日継続的に摂取すれば効果を感じられるでしょう。
当社においても、大きな可能性を秘めたエルゴチオネインの研究に、引き続き取り組んでいきます。