約8割が感じている新環境でのストレス。【精神科医師に聞く】大型連休明けも“ココロ元気に”過ごす秘訣
芦澤裕子先生
働く人の8割が、新しい環境にストレスを感じている
新年度を迎え、新しい環境に変わることも多い季節。3年を超えるコロナ禍を経て、リアル出社とリモートワークのハイブリッドという職場環境や、変わらずマスクを着けたままでの初対面など、新しい環境、新しい人間関係への適応も、コロナ禍以前とは違ったハードルを感じている方も多いかもしれません。
株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)は、20代~60代の働く男女1000人を対象に、会社での新しい仕事や人間関係に対するストレスの有無やその対処方法について調査しました。
新しい環境での緊張感から解放される大型連休のタイミングで起こることがあるといわれる「5月病」。この季節特有の精神的に不安定な状態、無気力な状態などを指す「5月病」の予防対策について、精神科医の芦澤裕子先生に解説いただきます。
【調査概要】 調査期間:2023年4月4日~5日 /調査機関(調査主体):株式会社ユーグレナ /調査対象 20~60代の有職者の男女 /有効回答数(サンプル数):1000名 ・調査方法(集計方法、算出方法):Q1=単数回答、N=1000 Q2=複数回答 N=1000
「会社で新しい仕事や人間関係にストレスを感じた経験がある」と回答した方が約8割(79.1%)を占め、多くの人が仕事、もしくは人間関係のいずれかでストレスを感じたことがあることがわかりました。また、半数を超える人(50.3%)が新しい仕事にも人間関係にもストレスを感じた経験を持っていることもわかりました。新環境での精神的な負荷は、多くのビジネスパーソンの問題だということがわかります。(図1)
また、「どのようにストレスを緩和・解消しようと努めたか?」という問いに対しては、多い順に、「苦手な人と極力接点を持たないようにする」(210人)、「好きなものをたくさん食べる」(197人)、「仕事以外で楽しみな予定や関心事を作り、そのことを考えてがんばる」(191人)、「睡眠時間を確保する」(177 人)、「休日のスポーツ、趣味などを積極的に行う」(162人)がトップ5となっています。(図2)
「5月病」のリスクが高い人とは?
「5月病」とは、そういった病名があるわけではなく、医学的には「適応障害」「うつ病」と診断されることが多い、この季節に起こりがちな抑うつ症状を呈する状態のことです。これは精神的または身体的なストレスや疲労によって心身に過大な負荷がかかり、脳がうまく働かず、ぼーっとしてしまったり、精神的に不安定になったり、無気力になってしまうなどの状態を指します。
環境の変化など、明らかにストレス原因となる事象が存在するのが通常で、その原因について夜、考え込んだりしてしまうことで眠れなくなってしまい、心身が回復しないまま日々を過ごしてしまうことが様々な抑うつ症状を増悪したりするといわれます。なんとか仕事ができている場合は大丈夫ですが、起床時から気力が湧かず、布団に身体が張り付いてしまって起き上がれないくらいの場合は精神科を受診しましょう。
プライベートでは軽やかに動けるけれども、仕事など、明確なストレス環境に行くことだけに気力が湧かないという人もたまに見られますが、そういったケースでも病的に重度な場合があるので要注意です。新しい環境に馴染めないなどのネガティブな原因のみならず、志望通りの進学や昇進など、ポジティブな変化であっても、「5月病」のような状態になることもあります。
下記項目のうち2項目以上チェックがつく人は、環境の変化による精神的ストレスや肉体疲労を貯めてしまうリスクがありそう。心当たりのある項目を改善するためにライフスタイルを工夫しましょう。
□ 完璧主義である
□ この春、仕事や家庭において大きな人間関係の変化があった
□ 勤務時間が1日10時間以上の日がほとんどである
□ リモートワークであまり日中外出しない
□ 1日中スマートフォンやPCなどを見ている
□ 愚痴を言う家族、同僚、パートナーがいない
□ 寝不足と感じる日が多い
□ 糖質や脂質に偏った食事など、栄養バランスの悪い食事をすることが多い
□ お酒を頻繁に飲んでいる
□ 軽い運動もする習慣がない
人とのコミュニケーションにおける対策
ストレス要因となっている特定の人物と会うと動悸がするなど、ストレスの原因が明らかな場合は、その人物から距離を取らせてもらうなどの物理的な対処が一番の対策です。そういった対処が難しい場合は、間に別の人が入ってコミュニケーションしてもらう、プライベートの時間に、気を許せる人に話を聞いてもらうというだけでも改善が見込めることは多いです。
反対に、リモートワークの機会が増え、コミュニケーション不足で「5月病」的な傾向になる人もいるかもしれません。細かいニュアンスが伝わらない、相手が忙しいかもしれないので話しかけられないという理由で実務の相談がしづらく、ひとりで抱え込んでしまい、解決できずに自信喪失してしまうという負のスパイラルに陥ることが一因です。周囲の人が「いつでもなんでも聞いて」という姿勢を示したり、複数人での会議開始時に雑談の時間を持ち、些細なことでも話してもいいのだと思える環境づくりもおすすめです。
リスクを軽減するには“睡眠”が重要
「5月病」と感じる精神的な無気力さは、何らかの理由で自律神経、脳神経が上手に機能できていないことなど、様々な要因が考えられます。自律神経も脳神経も、細胞ひとつひとつからできていて、身体の組織のひとつです。きちんと疲労が回復され、栄養や酸素がいきわたっている状態を作ってあげることが重要です。そして、身体組織の疲労回復には、睡眠の量や質が深く関わっています。
・起床時刻を一定にする
人間の概日リズム(生体リズム)は約25時間と、1日の24時間より1時間ほど長いのです。この差を修正するためには、朝の起床時刻を一定にし、朝、光を目の中に入れる事で24時間周期にリセットを。午前中に光を一定時間浴びることによって、自律神経や脳神経を正常化するのに役立つホルモン、セロトニンの正常な分泌にも役立ちます。
・睡眠の質をあげる食生活
調査結果でもストレス解消法として「好きなものをたくさん食べる」という声が第2位でした。美味しいものを食べることでも“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されるので、適度であれば好きなものを楽しむことはおすすめです。しかし、栄養が偏ったり、糖質・脂質など胃腸に負担がかかるものを過剰に摂ることは、長期的には血液中のコレステロールを増やしてしまったり腸内環境を乱すなど、メンタルヘルスにも良くない影響を及ぼす可能性もあるので注意。
睡眠の質の改善に必要な栄養素は、神経伝達物質を作るタンパク質、セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6、脳神経の正常な働きを助けてくれるビタミンB12、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の原料トリプトファン、ドーパミンを作るのに必須といわれる鉄、ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせるGABA、体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やすグリシンです。
肉や魚は日々の主菜にきちんと取り入れ、ビタミンB12豊富なしじみやあさりなどの貝類、グリシン豊富なエビやウニ、トリプトファン豊富な豆腐や納豆も積極的に摂ってみてください。主食には、GABAが豊富な発芽玄米がおすすめです。
また、睡眠の質の改善に役立つ栄養素を含むといわれるユーグレナは、59種類もの栄養素を含み、その中にはビタミンB6、ビタミンB12、トリプトファン、鉄、GABA、グリシンに加え、ユーグレナ特有のβグルカンである「パラミロン」も含まれています。ユーグレナ粉末1,000mgおよびユーグレナ粉末の入っていないプラセボ粉末を12週間摂取した臨床試験において、主観的な睡眠への満足度有意な向上が見られたという検証結果もあります。一般販売されているドリンクやタブレット型のサプリメントなどで取り入れることができます。
・お酒はNG。カフェインは夜眠る時間の5時間前まで
お酒は睡眠の質を下げてしまい、アルコールの利尿作用で就寝中に目を醒ませてしまうなどデメリットが大きいので、睡眠の質を改善したい場合は避けるように。神経を覚醒させ、入眠しづらくなってしまうカフェインも、摂るならば就寝時間の5時間前までに。
・夕食のメニューは入眠を左右…おすすめできないものは?
夜は脂っぽいものをなるべく摂らない、ないしは控えるように。胃もたれが身体的負担、精神的なストレスにつながり、睡眠の質を下げてしまう恐れがあります。食べすぎでの胃もたれも同様です。
食事、特に夕食は腹八分目を心掛け、理想は就寝の3時間前、難しい場合は、2時間前には食べ終えるようにしましょう。
・運動するべきタイミングと強度
運動すると身体に乳酸などの疲労物質が作られ、身体が疲労回復しようとするために入眠しやすくなります。また、運動をすることで全身の血流、ないしは脳の血流もよくなり、思考の処理などが行われやすくなることも。運動習慣を持つことで、中期的に体力がつくので仕事の集中力・意欲の維持にもつながり、仕事への自信喪失などに起因する5月病リスクも軽減できるかもしれません。午前中に屋外で15分以上散歩するなど、ほんのり汗をかく程度の運動が理想的。
・就寝時に深部体温が下がるようにぬるめの半身浴を
身体の内部の温度(深部体温)が下がる時に副交感神経が優位になり、入眠しやすくなります。眠るタイミングで深部体温の低下を下げるには、春夏の暖かい季節は1時間前までに、湯船で38度~40度のぬるめの半身浴で入浴を。20分ほどゆったり浸かりましょう。
・眠る1時間前からはパソコンやスマートフォンの液晶画面(ブルーライト)は見ないように
ブルーライトは、光の脳への刺激によって睡眠相(睡眠リズム)を崩してしまいます。本来は夕方以降にブルーライトを浴びないほうが理想とも言われます。また、眠る前のネットサーフィンも、見ていることに興味を持ってしまうことで交感神経が優位になり、入眠の際に優位になるべき副交感神経がうまく作用せず、なかなか寝付けなくなってしまいます。
理想の休み方
ゴールデンウィークなど大型連休だからと“ここぞ!”と楽しもうとして予定などを詰め込んでしまう過ごし方は、残念ながらおすすめはできません。計画的にみっちり動き回ろうとすることが、逆に精神的な疲労につながったり、連休があまりに楽しく充実した時間だと、仕事復帰後のギャップで精神的な落ち込みが大きくなるリスクも。
ぬるめの温泉などは、深部体温を温めてくれて睡眠の質を上げてくれるのでおすすめですが、長時間のプールなどは、体温を下げてしまい、交感神経が緊張し続ける状態をつくってしまいます。
気を許せる家族やパートナー、友人たちと、ほどほどに予定を入れて、夜は早めに眠る。そんな連休の過ごし方がもっともおすすめです。
監修:芦澤裕子先生
(精神科医・市川メンタルクリニック 院長)
日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医。心療内科、精神科のクリニックにて精神障害、睡眠障害などの治療にあたる。「心やすらぐ、ぐっすり眠れる夢の絶景カレンダー」「GOOD SLEEP BOOK 365日ぐっすり快適な 眠りのむかえ方」(翔泳社)監修。
市川メンタルクリニック 千葉県市川市市川1-4-10 市川ビル11F