栄養不足が要介護の5大リスクをもたらす!
全7回に渡ってお送りする「100歳時代の健康課題」と題したコラム、第4回目です。日本人の平均寿命が伸びていく中で、多くの方に健康な⽇々を過ごしていただけるような情報をお届けしてまいります。
「新型栄養失調(低栄養)」は、要介護の5大リスクに陥る確率を上げ、病気発症のリスクを高めます。高齢者を対象にした8年に及ぶ追跡調査によって、低栄養が、「認知機能症低下」や「心血管病」と関連していることがわかりました。
*体格指数(BMI)、アルブミン値、ヘモグロビン値、コレステロール値
認知機能症
善玉コレステロールと呼ばれる HDLコレステロール値は、栄養状態の指標*の1つですが、HDLコレステロールが低い人は、高い人に比べて、認知機能が低下する場合が多く、そのリスクは1.81倍にも上りました[下図]。コレステロールは脂質の摂取と関係しているので、脂質不足によって認知機能の低下が促進される可能性が考えられます。心血管病
脳卒中や心筋梗塞といった心血管病は、高齢者の死因の1つです。低栄養群は年を追うごとに累計生存率が下がり、心血管病による死亡のリスクは高栄養群と比較して2.5倍以上にもなりました[下図]。最も介護費用がかかっているのは低栄養傾向の高齢者
体格指数(BMI)と介護給付費の一人当たりの月平均額の関係性の調査によると、介護給付費が最も高かったのは、男女ともに“痩せている人”でした[図1-10]。BMIは栄養状態の指標でもあるため、痩せている人は “新型栄養失調(低栄養)傾向”といえます。このとこからも、低栄養傾向は要介護の5大リスクを招く可能性があると考えられます。「新型栄養失調(低栄養)」で寿命も縮まる
「新型栄養失調(低栄養)」の状態は、死亡率にどれだけ影響を及ぼすのでしょうか。栄養状態の指標ごとに比較した調査では、低栄養で死亡の危険度が1.5倍以上にも高まることが明らかになりました[図1-11]。そして、もともとの健康状態やその他の検査値の違いによる影響を除いた統合解析によって、それぞれの栄養状態の指標の値が低い人は、指標の値が高い人に比べて、死亡の危険度が非常に高くなっていることもわかりました。これらの調査で、低栄養は寿命も縮まる要因になることが示唆されたことになります。出典:「食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケンー」(東京都健康寿命医療センター)(http://www.tmghig.jp/J_TMIG/topics/topics_201502.html)
「死ぬまで介護いらずで人生を楽しむ食べ方」(新開省二著,2017,草思社)
「地域高齢者の栄養疫学研究とエビデンスに基づく健康支援」(東京都健康寿命医療センター研究所)( https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000168190.pdf )